大判例

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神戸地方裁判所 昭和25年(ヨ)120号 決定

申請人 福島正四郎 外二十七名

被申請人 大谷重工業株式会社

一、保証 無保証

二、主  文

本案判決確定まで、

被申請人は、申請人等を従業員として取扱はねばならない。

三、理  由

本件疎明資料に基いて認定する事実並にこれに対する判断は次の通りである。

(1)  申請人らは、いずれも被申請会社(以下会社と言う)経営の尼崎工場の従業員で、別紙記載の通り、それぞれ右従業員をもつて組織する全日本金属労働組合兵庫支部大谷尼崎分会(以下組合と言う)乃至は会社経営の寄宿舍大谷寮の寮生をもつて組織する大谷寮自治会(以下自治会と言う)の幹部であるところ、会社は昭和二五年三月三一日発送の書面をもつて、申請人らを次の理由で解雇する旨通告したものである。すなわち、解雇の理由として掲げるところは、

(一)  組合幹部については

(イ)  団体交渉の継続中、会社に対し事前に闘争宣言の通告をなさず突如として昭和二五年三月二六日、二七日の両日従業員に早出残業、夜勤を拒否するよう命じてこれを実行させたこと

(ロ)  三月二八日、会社の業務命令に反して、全工場の作業を停止し職場を抛棄させたこと

(ハ)  三月二九日早朝、会社側において反射炉の点火作業を行おうとした際、多数の従業員を指揮してこれを妨害し、遂に点火作業を不能ならしめたこと

(ニ)  三月三〇日、会社の許可なく、組合事務所を変電所内に移転し侵入したこと

(二)  自治会幹部については

(イ)  作業時間中の職場抛棄(三月一三日、一六日、一七日)

(ロ)  作業時間中の無許可集会(三月一三日)

(ハ)  作業時間中の示威運動(三月一三日、一六日、一七日、二四日)

(ニ)  作業時間中の事務所不法侵入(三月一三日、一六日、一八日)

以上の諸行為をもつて、組合幹部については、就業規則第二五条(遅刻、早退又は私用外出その他就業時間中職場を離れる際は、会社に届出で許可を受けなければならない)及び第七六条第四号(左の各号に該当するときは懲戒解雇に処する、但し情状によつては減免することがある……略……4、職務上の指示命令に不当に従はず、職場の秩序を紊したり紊さうとしたとき)の各規定を、自治会幹部については、同規則中、右の第二五条及び第七六条第四号の外第七六条第一一号(前条第三号乃至第一二号に該当しその情が重いとき)第七五条第九号(業務上の怠慢、又は監督不行届によつて災害その他事故を発生させたとき)の各規定をそれぞれ適用すべきところ、申請人らの名誉及びその将来を考慮して同規則第四三条第二号第三号(従業員左の各号の一に該当するときは、会社組合協議の上、三〇日前に予告するか、又は三〇日分の平均賃金を支給して解雇する……略……2、已むを得ない業務上の都合によるとき、3、前二号に準ずる已むを得ない理由あるとき)の諸規定を適用すると言うのである。

(2)  申請人らは、会社のなした右の解雇は無効であると主張するので、まずその解雇の法律上の性質を考察するに、後述の如き争議の経過及び会社の默示的な意思からして、その実質は、終局的且つ確定的に労働契約を終了させる個別的解雇と解するよりは、むしろ労働争議において、組合のなした争議行為(その当否は暫く措く)に対する防衞手段として、会社の主張を貫徹するため、組合の気勢を削ぎ急速に争議を妥結する手段としてなされた争議行為としての集団的解雇、すなわち、いわゆるロツク・アウトの一種であると解するのが相当である。けだし、

(一)  組合は、昭和二四年一二月頃からロール旋削工場の配置転換に関し屡々開かれた経営協議会において会社と交渉を重ね、昭和二五年二月八日労働協約も失効するに至つたので、同年三月一〇日に及び労働条件に関する諸種の懸案を一挙に解決すべく深夜業手当及び残業手当の五割増額その他一六項目につき要求を提出したが会社とその主張が一致するに至らず、遂に争議状態に入り、その後引続き会社と折衝を重ねていた。しかしながら、組合は容易に終局的解決が得られさうにはみえなかつたので、局面の転換を図るため、三月二五日会社に対し、三月二八日より早出、残業夜勤の一切を拒否し、全員定時出勤を行うことを通告し、三月二六日の夜勤より組合員に指令して時間外労働を拒否させ、三月二八日には全工場の作業を停止させ、一方寮自治会は三月一〇日中井舍監の寮賄費約金一六万円の無断費消については会社に責任ありとし、これを追究したがその態度の不明確なところから会社との間に摩擦を生じ、三月一三日には朝食問題について紛糾し、三月一六日組合の最高闘争委員会において寮問題に関しては組合が最終的責任を負うとの決議を得た上、一六日、一七日、一八日の作業時間中に或いは寮自治会大会を開き、或いは示威行動を取り或いは会社と交渉を持つため職場を離れ、二四日には遂に集団欠勤を行う等組合の委任の下に寮生に関する労働条件について争議を継続し、かくして三月二九日組合から鬪争宣言書を発するや会社は組合及び自治会の右の団体的争議行為に対抗する措置として三月三一日解雇の通知をなしていること

(二)  会社は、右解雇の通知を発するにつき、申請人らが、右の事態につき、自ら参加し、或いは指導し、若しくは煽動することによつて、個別的に責任を有するや否やについては深く調査もなさず、申請人らが前記の通り組合又は自治会の幹部であるとの一事により、一律に同時に解雇していること

(三)  会社においても、業務命令に服して生産に従事するにおいては、必ずしも個別的労働契約を消滅せしめる意思ではないこと

等から、本件解雇をその通告の文言如何にかゝわらず前記の通り判定するのが相当と考える。

(3)  しかして、集団的解雇は、集団としての労働者に対する使用者の対抗手段、争議手段であつて、これにより個別的労働契約を直ちに消滅せしめる効力を有するものではなく、労働者が飽く迄、不当に自己の主張を固持するにおいては、終局的且確定的に解雇することあるべき旨の最後的通牒であり、法律的には停止条件附類似の意思表示というべく、その確定的効力の発生は、労働の終局的拒否乃至は争議の妥結の方法如何にかゝつているものと解すべきである。しかして、本件においては組合は、四月一日及び三日に、争議解決のため、会社に対し団体交渉を申入れている点から見ても、必ずしもその主張を固持して会社の主張を全面的に拒否するものではなかつたことが窺われるから、会社のなした集団的解雇は未だ個別的労働契約には何らの影響を及ぼすものではないと解するを相当とする。従つて、また右集団解雇は、労働組合法第七条第一号に言う解雇にも該当しない。

(4)  以上解雇が未だ個別的に効力を発生していないと認められるにかかわらず、申請人らが被解雇者として扱われることは組合と被申請人との重大な交渉段階にある今日その所属する組合乃至自治会の団結維持を著しく困難ならしめるからこれらを避けるため、本件仮処分をなす必要があると認める。

よつて主文の通り決定する。

(裁判官 古川静夫 中島誠二 保津寛)

別紙

氏名 役名

A  執行委員長、最高闘争委員長

B  副執行委員長、最高副闘争委員長

C  〃、〃

D  書記長、最高闘争委員

E  常任執行委員、最高闘争委員

F  闘争委員

G  青年婦人部部長、最高闘争委員、寮自治会委員長

H  執行委員、闘争委員

I  〃、〃

J  〃、〃

K  闘争委員

M  闘争委員

N  執行委員、闘争委員

O  闘争委員、寮自治会闘争委員

P  執行委員、闘争委員

Q  執行委員、闘争委員、寮自治会闘争委員

R  闘争委員

S  〃

T  〃

U  〃、寮自治会闘争委員

V  〃、寮自治会闘争委員長

W  〃、〃副闘争委員長

X  青婦部副部長、寮自治会闘争委員

Y  〃常任委員、〃常任委員

Z  闘争委員、寮自治会闘争委員

a  〃、〃

b  寮自治会副委員長 以上

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